「本物の名物、鴨そば」

 

湖北へ行く時は必ずまずここで食事をと考える。昼食の時間にここへ寄れるように調整するのである。最近調整して寄るのだが、この店のある、道の駅「あじかまの里」自体が運悪く定休日だったり、開いていても鴨そばの店だけは休みの時に出くわしたりで、長いこと食べていない。

 

以前、西浅井「水の駅」の鴨そばの店としてやっていた頃から、少し仕事で関係もあってよく食べに行っていた。店の主(あるじ)とも、何度か話をしたことがあり、そばの味もさることながら、主の店に関する考え方を直接ご本人から聞かされていてよく分かっていた。

 

本物の特産品とはその土地の人が、平日にその土地で作ったり、育てたり、採ってきたものを土日とかに、本人が直接売って、お客に喜んでもらう。これが特産品販売の基本であり原点である、というのが主の持論だった。

 

そんなことから、好きだった鴨そばは、土日しか食べられないものであった筈であるのに、ある日の平日にそこを通りかかった時、何故か店が開いていた。

 

聞けばその日は役場が企画した観光ツアーがある日で、ツアー客が立ち寄るため店を開けて欲しいとの強い要請があって、特別に営業しているとのことであった。

 

主(あるじ)によれば、普段のウィークデーは客は少ない、店を開ければ赤字になるのは眼に見えているのに、行政とかはまず施設(建物)を作るので、常時営業の形を取って欲しい、と指導してくるとのことらしかった。主はそれには反対の立場で、現状維持を主張したらしい。

 

確かに私の様な鴨そばフアンはとっては、ここ鴨そばだけは平日もやっていて欲しいとが思っていたが、各地に次々と出来てくる「道の駅」等の施設は、結局はどこも同じ商品を並べている。卸業者から仕入れたものを売る土産物屋になってしまっていて、立ち寄る魅力はあまり感じていなかったのは現実である。

 

それから数年が経って、新しい常時営業の道の駅となって、名物「鴨そば」は毎日食べられるようになった。しかし、現在店を仕切っている娘さんによれば、しばらくして店の主(あるじ)は亡くなったとのことだった。

 

そばのだしは、毎日水からこだわって本格的に仕込み、鴨は自家で養殖したものを、添えるえびのかき揚げは、もう一つの店の名物にもなっている。 店で出しているのはその「鴨そば」と「川えびのかき揚げ」の二点だけ、冬も夏も年中それだけである。

 

湖北には以前ほど行く機会は減った。果たして、毎日開けていて、それに見合う人は入っているのかどうか、よく分からない。

 

聞くところによれば最近は、琵琶湖の水温上昇などがあってか、川えびがあまり取れなくなったとかで、「鴨そば」に添えたり、もう一つの名物である「川えびのかき揚げ」に使うえびの不漁が続き、ほとんど取れなくなったようである。

 

各地にオープンされる道の駅や大型商業施設との競争、若者の地方離れ等による人口の減少、自然環境の変化による産物や素材の供給、調達等への影響、又何よりも社会や経済状況の深刻な沈滞、低迷は集客面でに大きく影響してくるだろう。

本物を追求し提供する商いを阻害する要因は増大してきている。これらの環境のもとで本物を提供し続けることは至難な技になってくるのだろうか。

 

あるべき、その本道たる商いを守り伸ばす戦略が正しく築かれているのだろうか、不安な気持ちは拭い去れないのである。(滋賀県長浜市西浅井 あじかまの里) (続き・・)(indexへ)