祇園と貴船の「阿吽坊とべにや」

 

人が本物の味を求め、出かけていくには「どこのどんな店」。場所と店、という要素はやはり無視できないものがある。京都市内で言えば「祇園や貴船」は多くの人がまずは惹かれるところの一つであろう。

 

祇園の「阿吽坊」は小さな店であった頃から何度か店と場所を変えながら大きくなっていくのを見てきた。仕事の関係者を招く時や改まった場面などで利用することが多く、だいたい少し緊張しながらの会食の時が多かった。今の店は大勢でも、数人でも、個別的にでも、どんな状況でも対応出来るようになっている。

 

不思議なものでここで、誰とどんな時にどんな話しをしたかなどを記憶していることが多い。かと言って、過度の緊張をしていたから覚えていると言う訳でもないようである。もっと強い緊張をした仕事上のことでも忘れていることがあることを考えれば、緊張の度合いと記憶は必ずしも正比例するとは限らないのだろう。おそらく軽い緊張を伴う心地よさの方が記憶と正比例するのかもしれない。

 

ここで飲んだ美味しかった日本酒、にごり酒、焼酎、ビールの味の記憶が残っている、私の酒の味覚というものはここで覚えたのかもしれないと思っている。

 

貴船の「べにや」は遠縁にも当たり、おかみが私を小さな頃から知ってくれていることもあって、ちょこちょこと利用させていただいている。毎年夏になれば、ここの床での自然の涼しさに包まれて過ごす、まずは一献のひと時が脳裏に浮かぶ程。ここ貴船の夏の床料理は京都人にとっては、贅沢だが行ってみたい、憧れの一つでもある。

 

父母の法事や仕事上の大切な人の接待の場にもなっている。私の懐石料理、京料理、好きな鮎などの川魚料理の味覚の原点はここにあったのかもしれない。

 

この二つの店には、古くからの京都人も、今の若者にも満足させる要素をいくつも持っている。京都という土地が持つ歴史と伝統を生かしながらも暖簾や格式を笠に着ず、多くの人に京都そのものを味わってもらう、という姿勢を感じるとることが出来るのである。(京都市東山区八坂 阿吽坊)(京都市左京区貴船 べにや)(続き・・)(indexへ